今日は強度と耐熱性を兼ね備えたPolymakerのナイロンフィラメントCoPA (Nylon) フィラメントについて紹介いたします!
Bambu Lab X1 Carbonを使ってみたのですが、かなり設定に手こずった・・・
強度・耐熱の検証についてお話しします。
もくじ
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強靭!耐熱が欲しい?ならナイロン(PA)フィラメント!強度や耐熱性まで検証してみた // Polymaker Polymade CoPA 3Dプリンター
シリカゲルケースの改造がしたかった!
前々から作り直したかったBambu LabのAMSの中に入れているシカルケースを、今回はPolymakerのナイロンフィラメントで作り直します。
シリカゲルを乾燥させる度にシリカゲルを取り出してオーブンで乾燥させて元に戻すのは面倒!!!
シリカゲルケースごとオーブンに入れられたら楽なのに・・・・
ということで、耐熱性能の高いナイロンとしてCoPA (Nylon) フィラメントを選びました。
そのついでに、強度検証とか耐熱の検証とかのレビューも合わせてやってしまいたいと思います。
PolymakerのナイロンフィラメントCoPA (Nylon) フィラメント
初めに今回選んだナイロンフィラメントの紹介からしていきましょう。
今回使うのはPolymakerのナイロンフィラメントCoPA (Nylon) フィラメントというフィラメントです。
Polymakerさんは安全データシートだけじゃなくて、テクニカルデータシート技術的なところも強度や、耐熱温度もふくめて、Web上でデータシートを公開してくれているのでありがたいですね。
Polymakerさんのフィラメントはちょっと材料の価格は全体的に高いのですが、しっかりした性能が欲しいっていう時にはPolymakerさんを信頼して使用しています。今回も耐熱性能が絶対に必要なのでこのフィラメントを選択しました。
ナイロン?ポリアミド(PA)の特徴
このCoPA (Nylon) フィラメントの特徴なんですが、【CoPA】の「Co」は「コポリマー」なのかな?
ナイロン6とナイロン66のモノマーを重合したものっていうことなんですが、詳しいことはここでは触れないでおこうと思います。
「PA」は「ポリアミド」の略ですね。一般的には「ナイロン」って呼ばれています。ちなみに「ナイロン」はデュポン社(DuPont)というところが作ったポリアミドの商標名だったりします。
このフィラメントの特徴としては、「反らない」とか、「簡単にプリントできる」とか、「強靭性」とか「耐熱性」っていうところが特徴としてあげられます。
この「強靭性」とか「耐熱性」っていうのは一般的なPA、ポリアミドの特徴だったりしますね。
この特徴を生かして、ポリアミドナイロンは服の糸で使われたり、引っ張りに強いので釣り糸で使われたりしています。
そして「摩耗にも強い」ので工業製品系としてはコンベアのガイドにつかわれます。
他にもよく使われているのが組み立てとか検査の治具として位置を決める時のガイドのブロック(青いところ)とか。これはNCナイロンですかね。結構身近でもたくさん使われています。
「強度も強くて熱にも強い」っていう、いいとこづくめなように見えるんですが、【水分を吸いやすい】というデメリットもあります。
印刷中は常に20%以下の湿度に保たなきゃいけない。
水分を吸ってしまった場合は、70℃~90℃ぐらいで6時間~8時間かけてちゃんと乾燥させなきゃいけない。できたらプリント前に必ずやった方がいいかな。
ということもあって、ちゃんとアルミのバックに入ってフィラメントは輸送されてきます。
透明な袋だとどうしても水分って通ってきてしまうので、ここら辺もちゃんとしていますね。
余談ですが、ポテチの袋の裏側が銀色なのも水分が通ってこないようにするためだったりします。
乾燥/吸湿状態での曲げ強度と耐衝撃性
そしてその「水分を吸いやすい」という特徴について、公式から出ている【強度の比較】というところも見ていきましょう。
赤枠が乾燥状態のCoPA、青枠が吸湿した状態。
乾燥状態だとポリカーボネートぐらい曲げ強度(横軸)が強い。
その代わり、対衝撃性(縦軸)が弱めになっています。
このグラフを見ると右上のPolyMax PCの性能はすごいね。
それは置いておいて、吸湿すると青枠のところ、材料がちょっと柔らかくなって曲げに弱くなる。
そう聞くと悪いように思ってしまうんですが、柔らかくなって柔軟性が上がったことによって耐衝撃性は上がっていますね。
常温常湿だとどうしても水分は吸ってきてしまうので、CoPA (Nylon) フィラメントを使う場合はこちらのウエットのデータ(青枠)を基本的には参考にして、部品を設計するといいんじゃないかなと思います。
乾燥/吸湿状態での引張強度と軟化温度
次、引張強度と軟化温度ですね。
引っ張りの方もやっぱり乾燥してる方が吸湿してる状態よりめちゃくちゃ強くなっています。
軟化温度に関しては乾燥状態のデータしかなかったんですが、180℃まで耐えるらしいです。本当でしょうかね?そこも含めて後半で検証していきたいと思います。
オーブンで乾燥していきます
はい、実際に8時間乾燥していきます。
自分はコンベクションオーブンを持ってるので80℃で8時間乾燥していきました。
PAまで対応してるフィラメント乾燥機で70℃まで出るものがあればそれで対応することも可能です。
印刷中も乾燥させてあげてくださいね。
印刷中は自分の場合は調湿機能付きのフィラメントドライヤーがあったので、それで調湿モードを使用して低湿の状態で保ちながら印刷しました。
調湿機能付きのフィラメントドライヤーがなければ、乾燥剤をフィラメントドライヤーにいれて、湿度20%以下を保ちながら印刷してください。
プリンターまではPTFEチューブで外気に触れないようにCoPA (Nylon) フィラメントを供給しました。
プラットフォームはBambuのエンジニアリングプレート。
「PA」って書いてあるところからも分かると思うんですが、ポリアミドナイロンに対応したプラットフォームになっています。
実際に印刷していく!
そしたら、パパッと印刷していきたかったんですが・・・
このBenchyの量を見てください。結構苦戦しました。
ウブ上の情報を見てると結構苦戦せずに印刷できてる方はオープン式のプリンター、Ender-3シリーズとかが多かった。
今回はどうしてもBambu Lab X1 Carbonで印刷したいっていうことで色々調整してみました。
特にオーバーハングとかが弱い、そんな感じでした。
なのでそこを中心に調整しました。
最終的には推奨印刷温度の真ん中で設定は完了したんですが、オーバーハングとか自由曲面の荒れっていうところに関しては温度は低めで印刷速度は低めの方が良いっていう傾向でした。
追加でPolymakerさんの公式サイトではファンオフ(冷却オフ)を推奨されてたんですが、Bambu Lab X1 Carbonの場合はチャンバー付きで保温性が高いのか、結構冷却強めにした方がうまくいきました。
印刷設定条件
じゃあ条件見ていきましょう。
今回使用したプリンターはBambu Lab X1 Carbonです。
プレートはエンジニアリングプレートで、材料としてPolymakerのCoPAを使っています。
温度設定としては最終的には低温側ではなくノズルの温度を推奨温度域のど真ん中で260℃で統一。
オーバーハングが気になる場合は250℃まで落としてもいいと思います。
エンジニアリングプレートの温度は50℃で統一。
BambuのPAセッティングだとプレートの温度は100℃設定でチャンバーの温度が結構上がってしまうので、50℃ぐらいまで下げた方が良かったです。
冷却は常時ファンオンで補助ファンは100%にしてます。
今回のポイントは冷却をしっかりするというところです。
最後にちょっとGコードもいじっています。
チャンバーの中の空気を外に排出するファンは70%ぐらいの出力で回しています。
Sの次の数字が出力なのですが、だいたい「180」ぐらいで70%に設定できます。256で100%です。
あとは関係ないと思うんですが、最近【インフィルの設定】は3Dハニカムが強度が強いという結果が一応検証で出てきたので、一応「3Dハニカム」を最近は使うようにしています。
最後に重要な【速度】のところ。1層目の外壁は「50mm/sec」まで落として、1層目の内壁は「60mm/sec」。2層目以降は外壁と内壁両方とも「60mm/sec」にしています。
外壁を「60mm/sec」で内壁を「70~100mm/sec」まで上げると、それだけでも若干オーバーハングが汚くなってしまったので、全部「60mm/sec」に設定しています。
インフィル系は「150mm/sec」。これも上げすぎると荒れるので、このくらいに設定しています。
もう少し上げてもいいかもしれませんね。
Benchyでプリントクオリティ比較
これらの設定をすることで、最初は荒れちゃってたオーバーハングがどうなったか比較しましょう。
これがCoPA (Nylon) フィラメントで1個目にプリントしたBenchy。
外壁を「60mm/sec」で内壁を「100mm/sec」まで上げたら、ちょっとだけ荒れてしまいました。他のところは綺麗なので、印刷の時間をなるべく短くしたい方は、内壁とかインフィルの印刷速度を100mm/secくらいに上げてもOKです。
そして、これがさっき紹介した条件で印刷したBenchyです。最終的に落ち着いた条件ですね。
オーバーハングも完璧ですね。
このフィラメントの特徴なんですが、結構光沢感がギラギラで、ビカビカな見た目に仕上がります。
他にもブリッジなどもかなり綺麗で、この条件であれば十分に印刷可能です。
煙突の部分や細かい部分も綺麗に印刷できていて、素晴らしいです。
Benchyの形状ではかなり硬いですが、強度が高く、しなりもかなりあるので、スナップなどのしならせて割りたくない部品には非常に適しています。PLAよりも柔らかく、衝撃が加わる部品にも適しています。
デメリットもある
ただし、CoPA (Nylon) フィラメントのデメリットとして「サポートも強い」。
伸びがあり、PLAのようにペリペリと剥がれるのではなく、ブチブチと引き剥がす感じです。
ツリーサポートもむしり取るような感じで、サポート自体が強く、単体で壊そうとしても伸びと密着力が非常に強いです。部品としては良いのですが、サポートとしては厄介です。
ナイロン(PA)フィラメントの強度試験結果
次に強度検証と耐熱の検証を行っていきます。
まずは曲げの強度検証からやっていきましょう。
力の向きと積層面の向きが直行している試験片
このサンプルはCoPA (Nylon) フィラメントでプリントした【力の向きと積層面の向きが直行している試験片】です。積層方向的に一番強い積層方向です。
PLAなどの硬い樹脂では亀裂が入って壊れるほどの変形ですが、まだ大丈夫です。
これだけ変形しても亀裂が入らず、白化現象も全く起きていません。
非常に曲げに強いです。180°まで曲げても問題ありません。何度もグニグニ曲げて疲労を与えても全然壊れませんでした。
力の向きと積層面の方向が平行な試験片
次はCoPA (Nylon) フィラメントでプリントした【力の向きと積層面の方向が平行な試験片】です。積層方向的には一番弱い方向です。
積層間の密着力がどれくらい強いのか気になります。
こちらも硬いPLAでは壊れてしまうほどの変形量でも問題ありません。非常に良いです。
限界まで押し込みましたが、こちらもパキッと割れることはなかったです!
曲げた後の試験片も綺麗です。
180°まで追加で曲げるとさすがに割れてしまいましたが、かなり変形に強いことがわかりました。
衝撃が加わるところは良い感じにしなってくれて、力を逃して壊れにくい。
本当にそういう性能があるんだなということを改めて実感できました。
プリント条件と平均結果
そしたら、CoPA (Nylon) フィラメントでプリントした5本分の平均データも一応見てもらおうかと思います。
印刷条件はさっき説明した通り。
試験片の壁の層数やインフィルの形状、インフィルの割合もいつもと同じです。
結果がこれです。
いつもOVERTUREのPLA Plusで検証しているので、比較対象として一番左にOVERTUREの結果も記載しました。
そして今回のCoPA (Nylon) フィラメントと同じPolymakerのPLAの過去のデータも比較として載せてあります。
一番右のデータがCoPA (Nylon) フィラメントですが、試験装置で破壊はできなかったので正確には破断強度ではないんです・・・曲げていくうちに反発力が頭打ちでそれ以上伸びなくなったので、その値を5回の平均値として載せています。
破断強度ではないので、このデータだけで何かを言えるわけではないですが、変形しないように耐えるという性能はCoPA (Nylon) フィラメントにはあまりないので、【バキッと折れるまでずっと形状を保って欲しいという部品】ではPLAを使って、【多少変形してもいいから割れずにいて欲しい部品】とか、【突発的な力が加わる部品】にはCoPAがいいんじゃないかなと思います。
ナイロン(PA)フィラメントの耐熱検証結果
最後にCoPA (Nylon) フィラメントの耐熱検証をやっていきましょう。まずはBenchyを煮込んでみました。
沸騰したお湯で10分間煮込みました。
結果は、弾力が増えている感じはしますが、押しても変形する感じはないですね。
熱湯は全く問題なし。
次はオーブンで加熱していきます。
まず100℃ぐらいから始め、少しずつ温度設定を上げて10分加熱してからどうなるかを確認していきます。
まず100℃ぐらいの時は、触ってみても全然変形しないですね。熱いけど。
室温の時のBenchyと比べると少し弾力があります。
130℃ぐらいに上げてもあまり100℃の時と変わらないですね。
弾力は普通にしっかりしています。
全然ふにゃっとなる感じもなくて、130℃でも大丈夫そうです。見た目も変化なしです。
次に140℃ぐらい。かなり熱くて触るだけでも熱い感じですが、弾力は100℃の時から変わってないですね。140℃にも十分耐えてます。
常温の時から比較するとマット感が強くなってますね。
最後に160℃ぐらい。少し変形が見えてきました。CoPA (Nylon) フィラメントの耐熱的には160℃が限界かな。指で押しても変形する感じはないですが、煙突の先端などに変形が見えます。
冷やして観察してみると、縁のところに亀裂のようなものが見えます。
左が変形していない方、右が熱した方です。屋根のところも少し膨らんでいて、亀裂があります。中の空気が膨張して出てこようとしたのかもしれません。
カタログスペック上は耐熱温度180℃でしたが、あれはドライの状態、乾燥状態でのことです。
現在は初夏で湿度が50〜60%ぐらいあるので、その状態で数日放置したBenchyは空気中の水分を吸って若干スペックが落ちていたのかもしれません。
それでも140℃ぐらいまでは全く変化がなかったので、今回シリカゲルの乾燥でさらされる110℃では問題なく使えるということがわかりましたね。
耐熱の性能もかなり良いです。
最後にCoPA (Nylon) フィラメントのケースにシリカゲルを入れ替えて、そのままオーブンに入れて、変色してしまったシリカゲルが復活するかを確認して終わりにしたいと思います。
110℃で1時間乾燥した後に確認してみましょう。
完璧に復活しています。これで管理が楽になりそうです。
皆さんも靭性や耐衝撃性、耐熱性が必要な部品を作りたい方は、このCoPA (Nylon) フィラメントというナイロンフィラメント、ポリアミドのフィラメントを試してみてはいかがでしょうか。
今日はここまでです。また。
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